M&A Column

日本でLVMHのようなコングロマリットは誕生するのか?

国内大手アパレル各社は苦しい状況が続いている。
LVMH、リシュモン、ケリングなどを筆頭に多くの外資系企業が日本へ進出し、競争は激しくなるばかりで、国内大手アパレル各社は解決策の案出を迫られている。現状をなんとか打破するべく、不採算ブランドの整理し、希望退職者を募って人件費を削減するなどして経営改善に取り組んでいるが、まだ明るい兆しは見えてこない。

成長戦略としてのM&Aという考え方

現在、日本における企業数は421万社だが、M&Aの年間成約実績は約3000件と言われており、成長戦略としてM&Aを取り入れる企業は限られている。ファッション業界においては、例にあげた外資系企業のようなコングロマリットは存在しておらず、ブランドのM&Aもあまり行われていない。

一方、世界に目を向けると、ファッションブランドのM&Aは重要な成長戦略のひとつとして認知され、活発に行われている。グループに所属することはブランドをさらなる成長へと押し上げる要因であると捉えられているからだ。

例えば、LVMHは2011年に「ブルガリ」、2013年に「ロロ・ピアーナ」を買収、2016年には「カルバン・クライン」や「トミーヒルフィガー」を保有するG-IIIグループへ「ダナ・キャラン」の売却合意を発表するなど、M&Aは頻繁に行われている。

日本でも、M&Aが業界を活性化させる起爆剤にならないだろうか。

コングロマリットの経営上のメリットとは

ブランドを複数抱えるコングロマリットは、ワンブランドを運営する企業に比べると、経営上で有利な点がいくつかある。

まずは、ビジネスのスケールメリットだ。ブランドの出店場所は、ブランディングの観点で重要だが、複数のブランドを抱えていることで、百貨店との出店や場所交渉がワンブランドより有利に働く。広告も同様で、全てのブランドの予算を集約することでワンブランドが持っている力以上に露出させることができる。そして管理部門として位置付けられている物流、システム、人事、経理などの機能を集約してビジネスを効率化させることでコスト削減を実現することができる。

ファッションならではのメリットとしては、コングロマリットはブランドが交わるコラボレーションを可能にさせる。ケリングに所属する「プーマ」は、同傘下の「アレクサンダー マックイーン」や「ブシュロン」と商品のコラボレーションを実現させ、ブランドが新たな消費者を獲得するシナジーを生み出している。

国内では、ストライプインターナショナルが、2009年に買収した「トム・ブラウン」と「コエ」のコラボレーションアイテムを発表するなど、コラボレーションによってさらなる認知度向上を図るといった動きもみられている。

日本版コングロマリットは誕生するのか

今後日本におけるファッション業界でもM&Aが活発になれば、ブランド支援の機会向上、業界の活性化と成長への活路を見出すことができ、LVMH、ケリング、リシュモンと同等の世界に通用する日本版コングロマリットが誕生する日も遠くはない。個人的には、ファッションのエンタメ企業を目指しているストライプインターナショナルや、2015年に上場を果たしたTOKYO BASEなどに新しいマーケットリーダーになることを期待したい。

Takashi IKEMATSU

アメリカ留学時代,古着屋のディーラーを経験。 国内の紹介会社を経て、2008年にエーバルーンコンサルティングを設立。 主にエグゼクティブのサーチやM&A案件を担当。

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